僭越ながら、『アトリビューション -広告効果の考え方を根底から覆す新手法-(著:田中弦 氏他)』の書評をさせていただきます。
アトリビューションの現在を理解するためには、これ以上はない本だと思いますので、仕事でアトリビューションに関わりがある方は押さえておきたい良書です。
ただ私が期待していた内容とはちょっと違ったので残念でした。本書の序文で高広伯彦氏が書かれていたことが、まさに私の期待していたことだったのでワクワクして読み進めていたのですが、ちょっと消化不良の感を否めません。
本書にもあるようにアトリビューションは「コンバージョンした流入元以外も評価して広告予算を最適化するためのもの」と説明されることが多いように思います。しかし多くの方が既に気付いているとおもいますが、アトリビューションの本当の価値は広告予算の最適化だけではなく、もっと深くユーザとのコミュニケーション全体を最適化することのはずです。じゃないと、こんなにみんな騒いでないと思います。
言い換えると、「消費者がどんなメディアに接触して、それによって感情や行動にどのような変化が起きたのか」を把握して分析してマネジメントすることではないかと思います。
確かにまだまだ技術的な多く問題があり、オンラインでのメディア接触のみを評価する方法が主流ではありますが、それでもアトリビューションの目的は「広告予算の再配分」が全てではなく、目的の中心は「ユーザとのコミュニケーションの最適化」であるべきです。
本書の著者もその点は把握済みであるように読めましたが、このアトリビューションの明るい未来についての記述が少なかったことは、本書の残念なところでした。
高広伯彦氏の『次世代コミュニケーションプランニング』を読んでから、「コンテクスト」と「ソーシャル」と「アトリビューション」とが頭の中をぐるぐる回っていて、これら(+α)がどこかで収束して新しい考え方が生まれるのではないかと思っているのですが、本書がその収束点のヒントを示してくれるかと期待していたため、その意味において少し残念だった次第です。
繰り返しますが、アトリビューションの現在を押さえておくという目的では良書だと思いますので、一読の必要はあると思います。